世代ギャップ解消navi

親はなぜ娘のITエンジニアの仕事が分からない? 世代間の「新しい働き方」理解の壁

Tags: 世代間ギャップ, キャリア, ITエンジニア, 仕事観, コミュニケーション

親世代との間で、ご自身のキャリアや働き方について話す際、なぜか話が通じない、理解してもらえないと感じることはありませんでしょうか。特に、ITエンジニアのような比較的新しい職種や、リモートワークといった柔軟な働き方をされている方の中には、親から「具体的に何をしているの?」「それで安定しているの?」といった問いかけに、どう答えて良いか分からないというお悩みを持つ方もいらっしゃるかもしれません。

親御さんは、決して悪気があって理解を示さないわけではなく、世代特有の仕事観や社会経験に基づいた視点から、娘のキャリアを見ていると考えられます。この世代間の「仕事」や「働き方」に関する理解のギャップに焦点を当て、その背景にあるものと、より建設的なコミュニケーションのためのヒントを探っていきます。

なぜ親世代はITエンジニアの仕事や新しい働き方を理解しにくいのか

親世代がキャリアを形成された時代と、現代の仕事環境には大きな違いがあります。この違いが、ITエンジニアという仕事の理解を難しくしている要因と考えられます。

1. 時代の「仕事」のイメージの違い

親世代の多くは、物理的な場所(会社や工場など)で、決まった時間働き、目で見て分かりやすい成果物(製造物、書類、対面サービスなど)を生み出す仕事を経験されてきました。終身雇用や年功序列といった雇用形態も一般的でした。

一方、ITエンジニアの仕事は、多くの場合、無形の情報やコードを扱い、成果物はソフトウェアやシステムといった「見えない」ものです。リモートワークも普及し、働く場所や時間も柔軟になっています。こうした「形のない成果物」「場所を選ばない働き方」は、親世代にとって直感的ではないため、イメージしにくい傾向があります。

2. IT業界の歴史と専門性

IT業界は比較的新しい分野であり、その進化のスピードは非常に速いです。親世代にとって、インターネットやスマートフォンが登場したのが大人になってから、あるいはキャリアの中盤以降だったという方も少なくありません。若い頃からIT技術に触れてきた世代とでは、技術に対する馴染みや理解度に差があります。

また、ITエンジニアの仕事内容は専門性が高く、「プログラミング」「クラウド」「AI」「データ分析」といった言葉も、その内容が具体的に何を意味するのか、非専門家には理解が難しい場合が多いです。専門用語を使わずに説明するのは、当事者である娘にとっても容易なことではありません。

3. 安定性や将来性への懸念

親世代の仕事観では、「安定した企業に勤め、長く働くこと」が重視される傾向があります。IT業界は変化が激しく、新しい技術が次々と登場し、企業の栄枯盛衰も比較的早いというイメージを持つ方もいらっしゃいます。

娘が「安定しているか分かりにくい」と感じられる分野で働いていることに対し、親は無意識のうちに心配を抱き、「大変なのではないか」「将来大丈夫なのか」といった形で、理解しようとするのではなく、まずは心配の気持ちが先行することがあります。

世代間の理解の壁を乗り越えるコミュニケーションのヒント

親世代との間でITエンジニアの仕事への理解を深めるためには、いくつかのコミュニケーションの工夫が考えられます。

1. 無理に技術的な詳細を伝えようとしない

親御さんは、娘がどのような技術を使っているか、どのような開発手法を用いているかといった詳細を知りたいわけではない場合がほとんどです。それよりも、「どんな会社で、どんな人たちと、どんな目的のために働いているのか」といった、より人間的・社会的な側面に興味を持つことが多いです。

専門用語を避け、ご自身の仕事が世の中のどのようなサービスや製品に繋がっているのか、誰かの役に立っているのか、といった「成果の社会的な意義」や「仕事の役割」を抽象的に伝えてみることから始めてはいかがでしょうか。「皆さんが普段使っている〇〇というアプリの一部に関わっているよ」「会社のITシステムがスムーズに動くように支えている仕事だよ」のように、身近なものに例えることも有効です。

2. 仕事の「大変さ」や「やりがい」といった感情を共有する

仕事内容そのものの理解が難しくても、仕事で感じる感情は世代を超えて共有しやすいものです。「新しい技術を学ぶのが楽しい」「難しい課題を解決できたときにやりがいを感じる」「納期前は少し忙しいけれど、チームで協力して乗り越えている」といった、仕事における大変さや喜び、人間関係について話すことで、親御さんは娘の働く姿や心情をよりリアルに感じることができます。

3. 親世代の仕事観への敬意を示す

親御さんがこれまでどのような時代に、どのような仕事をしてこられたのかに興味を持ち、話を聞いてみることも大切です。親世代が経験した仕事の厳しさや工夫、価値観を知ることで、なぜ親御さんが特定の視点を持つのか、その背景を理解することができます。お互いの働く世界への敬意を示すことが、歩み寄りの第一歩となります。

4. 「理解」よりも「安心」を重視する

親御さんの「大丈夫?」という問いかけの背景には、娘の健康や生活、将来に対する根源的な心配があることが多いです。仕事内容を完璧に理解してもらうことよりも、「私はこの仕事にやりがいを感じて元気にやっているよ」「この仕事で生活も安定しているし、将来のことも考えているから大丈夫だよ」といった、娘が心身ともに健康で、自立して生活できていることへの安心感を与えることに重点を置いてみてはいかがでしょうか。リモートワークの際は、「運動のために散歩に出ているよ」「オンラインで同僚と雑談する時間もあるよ」など、健康面や孤立していないことを示唆する情報を加えるのも良いでしょう。

まとめ

親世代とITエンジニアである娘のキャリアに関する理解のギャップは、お互いの経験してきた社会や技術環境の違いから生まれる自然なものです。完璧な理解を求めすぎるのではなく、その違いを認め、お互いを尊重する姿勢が大切になります。

具体的な仕事内容の説明に固執せず、仕事の社会的な意義やご自身の感情、そして健康で安定した生活を送れていることを丁寧に伝えることで、親御さんの根源的な心配を和らげ、安心感を与えることができます。少しずつでも歩み寄るコミュニケーションを続けることで、より良い関係性を築いていくことに繋がるはずです。